吉田「俺は、夢を見ていた。いや、夢だったのか、まだ眠りについていなかったのか、意識は暗い黒の中だった。
しかし突然深い闇から引きずり出され、刺さるような光に思わず目を閉じる。
慣れた目を恐る恐る開くとそこは、暖かな光に包まれた、なにもない、どこまでも見渡せる空間が広がっていた。
状況が飲み込めずに立ち尽くすその頭上からふわり、まるで絵にかいたような幼い天使が一人、目の前へと舞い降りた。」

天使「パーリィゲイツジャパン近畿支部へようこそ〜」
吉田「よみがえる記憶、悪夢、…俺はここに見覚えがある…」
天使「あ、ホンマ?説明省けてよかったわ」
吉田「俺の記憶が確かならさ、もう一人いなかったっけ、ここ」
天使「アイツか、アイツやったら今は勤続50年のリフレッシュ休暇や、しばらく戻れへんで」
吉田「へ〜そんなのあるんだ…うん、ちょっと落ち着くわ、聞き間違いじゃなかったら今勤続50年って聞こえたんだけど」
天使「うん、近畿支部で今のペテロはんに次いで古株なんやアイツ」
吉田「現実が受け止めきれない、…ていうか待って待って待って!!ええ?!俺また死んだの?なんで?もう終わり?」
天使「いやー…送られてきた資料見てめっちゃびっくりしたけど、ホンマに吉田幸司なんやな」
吉田「あの審判またやんの、勘弁して!しぬ!いやだ!今度こそ本当に俺の心が死ぬ!」
天使「まあ落ち着きぃな兄さん、な?死んだわけやない、今回は別件や」
吉田「死ん、で、ないなら…別件?え?いやでもなんだよ、なんで俺またここにきたの、今すぐ帰りたい帰して」
天使「そらこっちとしてもかわいそうやしこれからの受難が目に浮かぶようやし帰してやりたい気持ちがないわけでもないけど、」
吉田「受難」
天使「あー…ええわもう面倒くさいからまず説明さして?そしたらうちの仕事は終わるんや」
吉田「えーなにこの俺が悪いみたいな状況…」
天使「ぱんぱかぱーん、おめでとう。このたびあなたは最後の審判の審判員に選ばれましたー」
吉田「…はあ、ん?え?」
天使「えーと、えー…これ読み上げるん面倒やからもうぶっちゃけるけど、俗世で言う裁判員みたいなもんやわ」
吉田「裁判員って、裁判員裁判の?」
天使「あ、知ってんねんな、よかった、それです、はいおめでとう」
吉田「…うん、まあ、その審判員ってのは置いとくとして、なに?選ばれたって」
天使「すごい確率やで、近畿圏にお住いの20代から60代の方のアホみたいな人数から、今回たった一人だけ選ばれたんが、兄さんや」
吉田「…作為的なものを感じるんですけど?!」
天使「いやいや…さすがにないと思うわ…知らんけど」
吉田「これが神の導きなら俺はもう神なんて信じない!ここから帰して!!」
ステ「ねえちょっと、ペテロはんお見かけしませんでした…って、あら、吉田幸司、もう着かはったんです?」
吉田「ヒィエッ!!キリステ…!」
天使「ああ、うん。さっき着たとこ」
ステ「説明は?」
天使「大方終わった」
吉田「さっきの雑い説明で大方終わりとか何言ってんのこの子」
アゲ「はーい、いらっしゃーい吉田幸司」
吉田「フゥワッ!ゲフッ、ゴホッゴホッ」
天使「大丈夫か、兄さん。思いっきり体に恐怖が染みついてるやん」
ステ「アゲル、ペテロはん応接間にお着きにならはった?」
アゲ「いいえ?寄り道してから行くわて言うたはりましたよ」
天使「あ、東京支部のかた来られてましたからそれとちゃいます?」
ステ「その東京支部のかたがお待ちなんですわ、さっきから」
アゲ「アハハ、それでボクが声かけたらパーッと逃げるように走っていかはったんですね」
ステ「笑いごとやあらしまへんけど、まあうちが相手さしてもらいますわ。吉田幸司は頼みましたよ」
アゲ「え?ステルおひとりで?」
ステ「よろしおす、頃合い見てぶぶ漬け頼みますよ」
天使「了解、なんやしらんけどステレオタイプなんが効くからな、東京支部は」
アゲ「ほなそっちはステルに任せますわ、いきましょか吉田幸司」
吉田「ヒエッいやです」
天使「はいはいもうええから行ってき、聞き分けないやっちゃなあ」
吉田「俺が悪いみたいな言い方ァ!あああああ待って待って、いやだ、ああああああ」(連れて行かれる)

つづく